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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)6181号 判決

原告

社団法人日本音楽著作権協会

右代表者理事

芥川也寸志

右訴訟代理人弁護士

井上準一郎

被告

清水昭

右訴訟代理人弁護士

坂晋

主文

一  被告は、東京都中央区銀座八丁目六番一八号ポルシェプラッツビル四階「会員制倶楽部あぽろン」において、本判決添付の楽曲リスト、同Ⅱ、同Ⅲ及び同Ⅳ記載の音楽の著作物を営業のために演奏してはならない。

二  被告は、原告に対し、二八〇六万六五〇〇円及び内金二四九四万八〇〇〇円に対する昭和五九年五月一九日から、内金三一一万八五〇〇円に対する昭和六〇年九月一四日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づく許可を受けたわが国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽の著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内の放送事業者をはじめレコード、映画、出版、興行、社交場及び有線放送等各種の分野における音楽の著作物の利用者に対して音楽の著作物の利用を許諾し、音楽の著作物の適法な利用を円滑簡易ならしめるとともに、右許諾の対価として音楽の著作物の利用者から著作物使用料規程に定める使用料を徴収し、これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。原告は、本判決添付の楽曲リスト、同Ⅱ、同Ⅲ及び同Ⅳ記載の音楽の著作物(以下「管理音楽著作物」という。)のうち、内国の音楽の著作物については著作権者との著作権信託契約約款により、各著作権者から著作権ないし支分権(演奏権、録音権等)の移転を受けてこれを管理し、また、外国の音楽の著作物についてはわが国の締結した著作権条約に加盟する合計四六か国の五九の著作権仲介団体(フランスのSACEM、イギリスのPRS、西ドイツのGEMA、イタリアのSIAE、アメリカ合衆国のASCAPその他)との相互管理契約により、右の各著作権仲介団体から演奏、放送及び上映を含む公開演奏を許諾する独占的権利の付与を受けて管理している(以下右のすべての権利を単に「著作権」という。)。

2  被告は、昭和四五年四月から同四八年五月末まで東京都中央区銀座六丁目六番九号ソワレド銀座ビル七階において、同四八年六月から同六〇年六月末まで同区銀座五丁目九番一二号ダイヤモンドビル地階において、同六〇年七月一日から今日まで同区銀座八丁目六番一八号ポルシェプラッツビル四階において、土曜、日曜及び祭日を除いた毎日、「会員制倶楽部あぽろン」という店名の高級クラブ(以下「本件クラブ」という。)の営業をしてきた。その間、被告は、本件クラブにおいて、ジョージ川口(ドラム奏者)、松本信三(ヴァイオリン奏者)らの著名な音楽家を常時継続的に出演させ、楽団演奏又はエレクトーン(後にピアノに変更)、ギターあるいはヴァイオリン等により、右音楽家らに管理音楽著作物を反復継続的に生演奏させた。

3  被告は、本件クラブにおいて、管理音楽著作物を演奏させることが、原告の管理音楽著作物の著作権を侵害するものであることを知りながら、又は過失によりこれを知らないで、前記2記載の期間これを演奏させ、原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。

4  原告が、被告に対し、管理音楽著作物を使用許諾することにより通常受けるべき金銭の額に相当する額は、次のとおりである。

(1) 原告は、昭和一五年二月二九日、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」三条一項の規定に基づき、主務大臣の認可を受けて「著作物使用料規程」を定め、その後数次変更をしたが、昭和四六年四月一日に認可された著作物使用料規程によると、管理音楽著作物の演奏のうち、軽音楽一曲一回の「演奏会形式による演奏」の使用料は、定員、平均入場料、使用時間によつて類別区分された料金表により別表(一)のとおり定められており、これをキャバレー、クラブ、スナック等の社交場において使用する場合は、右演奏会形式による演奏についての使用料の一〇〇分の五〇の範囲内で使用状況等を参酌して具体的な使用料を決定することとされている。原告は、社交場の使用状況等の参酌の方法として、①定員について五〇〇名未満を一〇〇名単位で段階的に区分し、客席数に応じて使用料を逓減し、②平均入場料について、入場料金を明示しない場合は、一セット料金(飲食税、サービス料を含む。)又は同相当額に三〇パーセントを乗じた金額に、テーブルチャージ、席料などがある場合は更にその額を加算した額を平均入場料として使用料を算定することとしている。

(2) 原告は、昭和五九年五月一八日、被告に対し、被告の本件クラブにおける昭和四九年五月一九日から同五九年五月一八日までの侵害行為について損害賠償債務の履行を催告し、次いで、同六〇年九月一三日、訴変更申立書をもつて、同五九年五月一九日から同六〇年八月一八日までの侵害行為について損害賠償請求の追加をしたが、その間の被告の管理音楽著作物の使用状況は、全期間を通じ、定員は五〇〇名未満、平均入場料は九〇〇〇円以上九五〇〇円未満、客席数は一〇〇名未満、管理音楽著作物の一日平均の演奏曲数は延べ四五曲、一か月平均の営業日数は二一日であつた。そこで、前記著作物使用料規程を本件クラブに適用してその使用料を算定すると、別表(二)のとおりであり、一か月の使用料は、二〇万七九〇〇円となる。したがつて、前記昭和四九年五月一九日から同五九年五月一八日までの期間一二〇か月の使用料相当額は、二四九四万八〇〇〇円であり、また、前記同年五月一九日から翌六〇年八月一八日までの期間一五か月の使用料相当額は三一一万八五〇〇円であり、合計二八〇六万六五〇〇円となる。

5  仮に、右損害賠償請求の主張が理由がないとしても、被告は、原告の許諾その他何らの権原なくして、原告の管理音楽著作物を本件クラブにおいて演奏して原告の著作権を侵害し、原告に対し、前記4の管理音楽著作物の使用料相当額の損害を与え、同額の利益を得た。そして、被告は、昭和四七年に本件クラブにおける管理音楽著作物の使用につき原告から使用許諾手続の督促を受けていたにもかかわらず、右手続をせずに今日まで本件クラブにおいて管理音楽著作物の演奏を続けているのであり、悪意の受益者である。

6  よつて、原告は、被告に対し、管理音楽著作物の著作権に基づき、東京都中央区銀座八丁目六番一八号ポルシェプラッツビル四階にある本件クラブにおける管理音楽著作物の演奏の差止め、並びに主位的に不法行為に基づく損害賠償請求として、予備的に不当利得返還請求として、二八〇六万六五〇〇円及び内金二四九四万八〇〇〇円に対する不法行為又は利得の後の日である昭和五九年五月一九日から、内金三一一万八五〇〇円に対する不法行為又は利得の後の日である昭和六〇年九月一四日から各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金又は利息の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  認否

(1) 請求の原因1の事実は知らない。

(2) 同2前段の事実のうち、被告が昭和四五年四月から同六〇年六月末まで原告主張の場所で原告主張の日を除いた毎日、本件クラブの営業をしてきたことは認める。同2後段の事実は否認する。

(3) 同3は争う。

(4) 同4(1)の事実は知らない。同4(2)の事実は否認する。

(5) 同5の事実は否認する。

2  主張

原告は、著作物使用料規程に基づいて算定した金額をもつて、損害としている。しかし、第一に、演奏会は、音楽を聞くこと自体が目的であるが、クラブ等の社交場は、食事をし、酒を飲むこと自体が目的であつて、音楽はそれに付随するものにすぎない。したがつて、社交場における音楽著作物の使用料を演奏会における使用料の五〇パーセントとする原告の著作物使用料規程は、不当である。第二に、クラブ等の社交場において原告に対し支払つている音楽著作物の使用料は、実際には、原告の著作物使用料規程により算定した金額よりはるかに低額である。著作権法一一四条二項所定の「その著作権…の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額」とは、原告と社交場との間で著作物使用許諾契約を結んだ場合に現実に支払われる使用料相当額を基準として定めるべきものであり、訴訟になつたからといつて、通常の使用料よりはるかに高額のものを請求することは権利の濫用である。

三  被告の主張に対する原告の反論

原告の使用許諾業務においては、著作物使用料規程に準拠しかつ同規程取扱細則七条に基づき、長期の継続的な使用契約者に対しては一定の優遇措置を講じている。すなわち、契約者において、(1)演奏の有無、回数にかかわらず、約定の月額使用料を支払う、(2)不払の場合は同額の違約金を加算する、(3)契約時に保証金を納付することを条件として、著作物使用料規程に基づく使用料額を更に五割相当の額に減額する取扱いを実行している。しかし、このような使用料の減額は、誠実に事前許諾を求めた契約者に対し約定使用料として合意されるものである。それゆえ、原告が著作物使用料規程を下回る約定使用料を設定しているからといつて、本件の被告のような無断使用者が減額の特典を受けることは許されない。被告の権利濫用の主張は、失当である。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一〈証拠〉によれば、請求の原因1の事実が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

二請求の原因2前段の事実のうち、被告が昭和四五年四月から同六〇年六月末まで原告主張の場所で原告主張の日を除いた毎日、本件クラブの経営をしてきたことは、当事者間に争いがなく、その余の事実は、被告において明らかに争わないから、自白したものとみなされ、また、〈証拠〉によれば、同2後段の事実が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

三〈証拠〉によれば、被告は、音楽著作権に関する業務を目的として昭和四二年三月二〇日に設立された太平洋音楽出版株式会社の代表取締役であつたこともあつて、原告の音楽著作権仲介業務についての知識を有していたこと、被告は、遅くとも昭和四七年ころから今日まで、原告から本件クラブにおける管理音楽著作物の使用につき使用許諾手続を取るように再三催促されてもこれに応じなかつたこと、以上の事実が認められ、被告本人尋問の結果中、右認定に反する供述部分は、前掲各証拠に照らしたやすく信用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はなく、右認定の事実によれば、被告は、遅くとも昭和四七年以降は、原告の管理音楽著作物を本件クラブにおいて無断で使用することは、原告の著作権を侵害するものであることを知りながら、又は過失によりこれを知らないで、前記二のとおり、本件クラブにおいて原告の管理音楽著作物を継続的に使用してきたものと認めることができる。

四以上によれば、原告は、被告に対し、原告の管理音楽著作物の著作権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額としてその賠償を請求しうるところ、右相当額は、次のとおりである。

1 〈証拠〉によれば、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律三条の規定により、昭和一五年二月二九日に認可され、その後数次の変更を経て昭和四六年四月一日に変更認可された著作物使用料規程には、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、ダンスホール、喫茶店、ホテルその他これらに準ずる社交場において著作物を使用する場合は、「演奏会形式による演奏」の規定の一〇〇分の五〇の範囲内において、使用状況等を参酌して使用料を決定する旨規定されており(第2章第2節4)、また、右の演奏会形式による演奏の場合の軽音楽一曲一回の使用料は、定員、平均入場料、一曲の使用時間を基準に別表(一)のとおり定められている(同規程第2章第2節2及び同第2節4の備考③の「平均入場料が一〇〇〇円以上の場合は、五〇〇円までを増すごとに、五分未満の料金に一〇〇円を加算する」との定め)ところ、右の使用状況等の参酌事項として、著作物使用料規程取扱細則(社交場)には、社交場の定員は客席総数等を基準に算定し(4条1項)、定員一〇〇名未満の社交場については使用料金額に五〇〇分の一〇〇の参酌係数を乗じること(6条)、社交場の平均入場料は、セット料金又はビール一本、つまみ、ホステス料の各料金の合計額(税、サービス料を含む。)の三〇パーセントに、席料、テーブルチャージ等を加算した金額を基準に定めること(4条2)が各規定されていることが認められ、そして、前掲〈証拠〉によれば、本件クラブは、前記著作物使用料規程取扱細則4条に定めるところによる定員が六七名、平均入場料がビール一本とつまみに税、サービス料を加えた値段一万三四八〇円の三〇パーセントの四〇四四円にテーブルチャージ五〇〇〇円を加えた九〇四四円であることが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

2 次に、原告は、本件クラブにおける管理音楽著作物の一日平均の演奏曲数は延べ四五曲である旨主張する(五分以上一〇分未満の曲及び一〇分以上一五分未満の曲は、料金が五分未満の曲の二倍及び三倍であるから、それぞれ二曲及び三曲として計算する。以下同じ。)ので、審案するに、前掲〈証拠〉によれば、昭和五八年から同六〇年にかけての本件クラブにおける出演者及び演奏時間帯は、原則として別表(三)のとおりであつて、松本信三楽団(二人編成。以下「松本楽団」という。)とジョージ川口楽団(四人編成。以下「川口楽団」という。)はそれぞれ一日に三〇分の演奏を三回、二〇分の演奏を一回(各合計一一〇分)行う予定となつていること、原告の調査員数名が、昭和五八年一一月二日、同年一一月二五日、同年一二月一六日、同五九年五月一一日、同六〇年二月八日及び同年七月三〇日の六回にわたつて、原告の調査員であることを秘して、客として本件クラブへ行き、松本楽団及び川口楽団による演奏曲目について調査したところ、松本楽団は、右六日間の調査時、合計四一三分演奏し(全演奏時間については、一演奏時間帯中における曲間の休止時間も含む。以下同じ。)、右時間中、管理音楽著作物を合計三一九分、すなわち、全体の七七・二パーセント(端数切り捨て。以下同じ。)演奏したこと、また、川口楽団は、右六日間の調査時、合計四二一分演奏し、右時間中、管理音楽著作物を合計二八一分、すなわち、全体の六六・七パーセント演奏したこと、及び松本楽団の右調査期間における本来の演奏予定時間は、三七〇分であるのに対し(演奏時間帯の中途から調査が開始された分は除く。以下同じ。)、実際の演奏時間は三九六分(一〇七・〇パーセント)であり、また、川口楽団の右調査期間における本来の演奏予定時間は、四三〇分であるのに対し、実際の演奏時間は四〇九分(九五・一パーセント)であつたこと、並びに右調査期間中における一曲の平均演奏時間(ただし、五分以上又は一〇分以上の演奏時間であることが明らかな曲は、それぞれ二曲又は三曲とみなして計算する。)は、松本楽団が、全演奏時間四一三分を延べ演奏曲数一二三で除した三・三五分であり、また、川口楽団が、全演奏時間四二一分を延べ演奏曲数一二二で除した三・四五分であること、以上の事実が認められる。右認定の事実によれば、本件クラブにおける一日の管理音楽著作物の延べ演奏曲数は、松本楽団の場合、一日の演奏予定時間一一〇分に右予定時間と実際の演奏時間との比一・〇七〇(一〇七・〇パーセント)及び全演奏時間における管理音楽著作物の占める割合〇・七七二(七七・二パーセント)をそれぞれを乗じて得られる時間を一曲の平均演奏時間三・三五分で除した二七・一であり、また、川口楽団の場合、一日の平均演奏予定時間一一〇分に右予定時間と実際の演奏時間との比〇・九五一(九五・一パーセント)及び全演奏時間における管理音楽著作物の占める割合〇・六六七(六六・七パーセント)をそれぞれ乗じて得られる時間を一曲の平均演奏時間三・四五分で除した二〇・二であり、したがつて、その合計は、四七・三曲である。右認定に反する証人松本信三及び同川口譲治の供述部分は、前掲各証拠に照らしたやすく信用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

また、被告は、前記二の認定のとおり、昭和四八年六月から同六〇年六月末まで銀座五丁目のダイヤモンドビルにおいて、同年七月一日から銀座八丁目のポルシェプラッツビルにおいて本件クラブの営業をしたものであるが、前掲各証拠及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件クラブに出演する演奏家については若干の変動があるものの、本件クラブにおいて演奏される音楽の種類、傾向及び演奏時間は、本件クラブの営業の全期間を通じ、前記調査がされた昭和五八年ないし同六〇年ころと比べ、特段の変動がないことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

以上によれば、本件クラブにおける昭和四九年五月一九日から同六〇年八月一八日までの間の管理音楽著作物の一日平均の演奏曲数は、原告主張のとおり延べ四五曲であると認めるのが相当である。

3 以上認定の事実に基づいて算定すると、本件クラブにおける管理音楽著作物の使用料は、別表(二)のとおり一日九九〇〇円となるところ、その算定は、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律三条に基づき文化庁長官により認可された原告の著作物使用料規程に基づくものであるから、右金額をもつて管理音楽著作物の使用により原告が通常受けるべき金銭の額に相当する額に当たるものと認めるのが相当である。として、原告が土曜、日曜及び祭日を除いて本件クラブを営業してきたことは、前記のとおり当事者間に争いがなく、一か月の営業日数は二一日と認めるのが相当であるから、一か月の使用料相当額は右の九九〇〇円に二一を乗じた二〇万七九〇〇円となり、したがつて、昭和四九年五月一九日から同五九年五月一八日までの一二〇か月の使用料相当額は二四九四万八〇〇〇円、同年五月一九日から翌六〇年八月一八日までの一五か月の使用料相当額は三一一万八五〇〇円、合計二八〇六万六五〇〇円となる。

五被告の権利濫用等の主張について判断するに、原告の本訴請求に係る使用料は、適法に文化庁長官の認可を受けた著作物使用料規程に基づくものであるところ、著作物使用料規程に定める使用料が高額にすぎるものと認めるに足りる証拠はなく(被告本人尋問の結果中、高額にすぎる旨の供述部分は、これを裏付ける資料もなく、直ちに採用することができない。)、また、前掲〈証拠〉及び弁論の全趣旨によれば、原告は、社交場営業者に対し、著作物使用料規程取扱細則7条により、(1)契約期間中営業者において演奏の有無及び回数にかかわらず月額使用料の支払義務を負担すること、(2)契約不履行があつた場合は不履行の期間について各月の使用料と同額の違約金を加算して支払うこと、(3)原則として月額使用料の一年分に相当する額の契約保証金を契約締結と同時に納付することを条件として、同規程に基づく使用料を更に五割相当額減額して使用許諾契約を締結する取扱いを行つていることが認められ、右認定の事実によると、右の減額された使用料は、右のような不利益な条件が課された者に認められているものであつて、右使用料を無断使用者にも適用すべきものとする理由はなく、更に、原告が使用許諾者に対し右以外の減額措置を講じていることを認めうる証拠もないから、特に被告に対し使用料の減額をすべきものとは認められず、したがつて、被告の右主張は、採用することができない。

六よつて、原告の本訴主位的請求は、理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、仮執行の宣言について同法一九六条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官清永利亮 裁判官設楽隆一 裁判官富岡英次)

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